• 小野誠人

これからの主流になるか不動産賃貸契約における電子契約の活用 (全国賃貸住宅新聞 2018年8月13日号)


賃貸契約の電子化で業務効率化を図る

締結までの期間短縮に効果

 

弊社は孫正義が1981年に開始した事業を2014年4月に分社化し継続している事業体で、ソフトウェアやクラウドサービスを扱い、4年前からは電子契約サービスを扱っており、その中で不動産賃貸契約向けに特化したサービスが必要ではないかと考えている。 


日経新聞にデジタルファースト法案が次期国会に提出されるという記事が出て、この中に宅建業法の書面交付電子化が入るかもしれないという話があったが結局は見送りとなった。しかし何年かの間に、紙も不要、印鑑も不要の契約が実現するのではないかと推進に取り組んでいる。


では、そもそも電子契約は普及するのか。不動産会社との話の中では、緩やかに普及している実感があり、オンラインの入居申し込みサービスは確実に増えている。入居申し込みや保証の審査は電子化が進めば、やりとりもスムーズになるため、必然的に電子化されていくと考えている。


賃貸契約の電子化について国土交通省に話を伺ったのが16年3月。それから2年間、業界内での宅建業法への理解が進んだと感じている。その中で書面の交付は必要、という声が聞こえるようになったのは進展だと思っている。また、契約が紙でなくてはいけないのは宅建業法37条に書かれているからというが、契約の手段までは定めていない。一方で更新の契約であれば法的な制約ない、電子化しやすいという動きも出てきている。不動産売買で電子契約を採用している会社には、印紙代が必要なくなるという理由がある。


では賃貸契約ではどんなメリットがあるのか。第1に封筒のやりとりがなくなる。新規の賃貸契約では、通常6回程度の書類の発送作業が発生し、発送料や手間も時間もかかる。このうちの4回は賃貸契約書に起因する作業だ。しかも賃貸契約書は2部あり、回収した後に押印して戻さなければならない。賃貸契約は諾成契約と表現できるが、辞書によると当事者双方の合意だけで成立する契約。売買、賃貸借、請負等と書かれている。これが大原則としてあるため、入居者の申込とオーナーの審査許可が行われれば、紙はなくても賃貸契約は成立しているといえるのではないかと考えている。


電子契約の仕組みは添付ファイルをやりとりするのではなく、契約書のファイルをクラウド上にアップロードしてお互い見に行くというイメージで、やりとりが圧倒的に早くなる。期待される効果は、1案件あたり3000円くらいのコスト削減効果が見込まれる。郵送も1回あるかないか程度、契約締結期間も早くなり、作業も半分以下となれば、これは働き方改革にもつながる。


半年前までは電子契約で業務効率化、スピードアップについて話していたが、今はスピードを競争力にすることを目指すという話をしている。働き方改革だけではなく、企業の発展に寄与することを電子契約の目的にしたい。オーナーに対しては賃料を早く発生させることができ、他者とも差別化できる。なぜ賃貸契約でこの発想がなかったのか。電子契約がある程度普及してから始めればいい、と言う人もいるが、すでにある意味普及していると言える。スマートフォンは人口の8割が使っていて、インフラは整っており、保証会社も電子化やスマホ最適化が進んできている。その中で行政指導に任せるだけではうまくいかない。現場から声を上げないと、現場のことが考えられていないIT重説のような制度になってしまう。現場からきちんと意見を出し、行政も巻き込んだ電子契約という働き方改革を通じて業界を変えていきたい。

全国賃貸住宅新聞 2018年8月13日号

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