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全国賃貸住宅新聞 2020年3月23日号 電子契約最前線「関西版」「高齢家主も電子化に同意」

業務効率化を目的に、賃貸借契約の電子化に取り組む不動産会社を取材した。電子化によって管理戸数が増えても、少人数で契約業務を遂行できる体制が構築できている。 他社仲介向けにマニュアルを作成 エコホームズ 管理戸数1900子のエコホームズ(大阪市)は2018年から賃貸借契約手続きの電子化を進めている。20年2月は管理物件の賃貸契約約75件中32件を電子化した。 同社の管理戸数は毎年200戸程度増加している。管理戸数が増加しても人員を増やさずに業務を遂行できる体制を構築しようとITツールの活用を進めている。同社の管理戸数の8割は他社の仲介会社がリーシングをしている。同社にとって、仲介会社とのやり取りを含めて契約手続きを効率化することが課題だった。

実際、電子契約によって、契約書を郵送するコストや手間を省くことができた。また記入漏れの確認や、書類を送りなおし不備を解消する必要もない。宅建業法に基づき、契約書の交付は書面で行うが、署名押印などの契約行為は、借主、貸主ともに電子契約システムの『IMAoS(イマオス)』を活用している。

同社の契約手続きは、入居申し込みから電子化している。家賃保証会社のジャパンアシストコーポレーション(以下、JAC:大阪市)をウェブ申込『Conomy(コノミー)』を活用した専用スキームを開発。エコホームズは他社仲介会社からの入居申し込みを専用ウェブページで受け付けると、JACに情報が通知され自動で審査が進む。FAXで受け取った入居申し込みを家賃債務保証会社に送りなおす必要はない。JACの審査が下りると、エコホームズは家主に入居許可を取って、契約書や必要書類の作成を進める。

仲介会社には、入居審査が下りたことと、電子的な賃貸契約手続きになることを伝える。賃貸契約に付随する一部の手続きは電子化できないため、PDFで送ったものを仲介会社が印刷して入居者に送付する。家賃の自動払い込み用紙や火災保険の申込書と口座用紙などが該当する。入居者や連帯保証人にはエコホームズから直接SMSで電子契約書を送り、記入、押印をもらう。「契約に必要な書類は印刷せずに、電子契約システムに取り込むだけ。あとはメールやSMSで送るので、席を立つことなく短時間で契約書の送付が完了する。

担当者の作業効率がかなり上がった」と大野勲社長は語る。

仲介会社や入居者に対し、電子契約のマニュアルを作成。わかりやすく図解したことで、手続きに関する問い合わせはかなり減った。 貸主に対し契約を電子化する旨を通知し、同意書を得ることで、対応可能物件を増やしてきた。現在は管理物件の8割で電子契約ができるよう同意を取り付けている。対象物件であっても、借主もしくは連帯保証人がスマートフォンを所有していない場合は、電子契約ができない。「改正民法の施行によって、連帯保証人を不要とする家賃債務保証会社が増えていけば、電子契約の件数も伸びるかもしれない」と、大野社長は期待を寄せている。 担当者の残業時間減少 エコホームズ(大阪市)大野勲社長(43) 今年の繁忙期は担当者の残業が少なくなり、コストも減り電子化による成果がでている。新規の管理受託が積極的にできる体制が整った。今後はRPAを検討中だ。管理ソフトと入居申し込みを受け付けるシステムに同じ情報を書き込み仕事があるため、この重複作業をRPAで自動化したいと考えている。 80件中50件で実施一人で5000戸対応 第一住建 約6300戸管理の第一住建(大阪市)も2018年から賃貸借契約の電子化に取り組んでいる。自社所有物件から始め、2019年から管理物件の家主に同意を取り、対象物件を増やしていった。20年2月は、80件中50件と半数以上を電子契約で締結している。ファンドやリードなどの機関投資家には電子契約の提案をしていないが、個人や不動産会社はほぼ同意を取り付けている。家主が高齢の場合も親族の協力を得たりして、電子契約での手続きを行うことができている、電子契約を提案した家主のうち、断ったのは5人以下だ。家主にとっても紙を補完する手間がなくなり、好評だという。

当社は管理物件を年に1000~1500戸増やしている。エリアによって管理物件の契約手続き業務を分担しており、かつて一人で1500戸を担当していたが、現在も一人で5000戸を担当。「5年前に比べて管理戸数は増えたが、業務にかかる時間は少なくなっている」と奥田恒弘管理事業部営業課シニアマネージャーは成果を語る。

同社の管理物件の3分の2が他社仲介によるリーシングで、空室情報が閲覧できる専用サイトから入居申し込みをダウンロードできる仕組みを持つ。記入された入居申し込みをFAXで受け取り、入居審査とオーナー確認を取ったあとの手続きが電子化になる。同社では家賃債務保証を内製化しているため、保証の審査手続きも電子化対応が可能。その後の手続きについては、仲介会社に電子契約になることをメールで通知する。

入居者がスマートフォンを持っていない場合や、家主が別の家賃債務保証会社を指定した場合などは、紙での手続きになる。電子契約の実施割合は年間平均で5割ほど。仲介会社に対して手続き方法のマニュアルを作っている。

国交省が昨年末まで実施していた『35条、37条署名の電子交付社会実験』には同社は参加しなかった。しかし電子交付が出来るようになるのを心待ちにしている。37条書面、いわゆる契約書の電子交付が認められれば、契約手続きを完全にペーパーレス化できる。 「今まで書面でしか手続きできなかった家財保険などの電子化が進むことに期待している」と奥田氏に余マネージャーは語る。さらに業界で電子手続きが普及すれば機関投資家への提案も可能になるだろう。 マンスリーで活用 翌日入居が容易に可能 アクロスコーポレーション 収益不動産の売買仲介を主軸に約1000戸の賃貸管理事業を行う、アクロスコーポレーション(大阪市)はマンスリーマンション契約を電子化している、活用している電子契約システムは『IMAoS』で、1カ月の試用期間を経て、19年10月から本格運用を課k氏。3月16日までに360件中191件を電子契約で締結した。

管理物件の多くが好立地の区分マンションであることから、収益拡大を図り、マンスリーマンション運営を19年1月に開始。一般賃貸物件のリーシングは他社に任せている一方、自社で担うマンスリー運営は契約業務が負担になっていた。業務効率化を図るべく契約業務の電子化に着手した。従来は、借主が来店し対面で契約するが、郵送で契約書をやりとりするか。郵送の場合は契約完了まで1週間ほどかかるため、すぐに入居したい顧客ニーズに対応できなかった。

電子化に伴い、定期借家だった契約形態を一時使用目的の契約に変更。書面交付や重要事項説明を不要にした。電子契約を活用しているのは借主が個人の場合のみだ。法人借主の場合は、電子契約に対応できるか社内の確認や稟議に時間を要してしまう。個人契約の場合はすべて電子契約で締結。早ければ1時間以内で完了する。 郵送の手間やコストを削減でき人員減につながった。マンスリー運営の担当者は当初4人だったが、現在は2人。運営戸数は120戸で積極的に増やしている。

白川卓弥社長は「法律的なことがクリアになっていけば、いずれ賃貸者契約や売買契約も電子化する方針。ITツールにもデメリットがあるので、アナログな手法との併用によってベストな業務フローを構築したい」と語り、商慣習にとらわれず利便性を追求していく姿勢を見せる。 入居申込からウェブで手続き家賃保証会社がシステム提供 JAC JACでは、入居申し込みから契約の手続きを電子化できるシステムを19年10月から提供している。片桐竜也営業部次長は「利用する不動産会社は徐々に増えつつある。だが入居申し込みから契約の作成を電子化するといういたってシンプルな話を難しくとらえる管理会社はまだ多い」と話す。慣れている紙での業務から脱却することに不安を感じるのが大きな要因の一つだろう。加えて重要事項説明書の写しや家賃の自動振り込み用紙など、電子化されていない業務が発生するため、効率的ではないという印象を持たれるかもしれない。

一方、同社のサービスを導入した管理会社は、書類の回収や契約が迅速に行え、業務効率が図れるという。「費用については要相談。管理会社が一から自社で仕組みをつくって導入するよりコスト削減できる」(片桐次長)


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